2017年9月26日
岩手日報 7面
中国進む スマホ決済 日本でも導入 詐欺に懸念も
 中国でスマートフォンを使った決済サービスが爆発的に普及し、現金を使わないキャッシュレス化が進んでいる。スマホ一つで買い物ができる便利さが人気で、日本でも中国人観光客向けに小売店が導入、スマホ決済を使った新ビジネスで日本に進出する中国企業も現れた。一方、中国ではサービスを悪用した詐欺事件が多発、新技術に疎い高齢者が取り残されることに懸念の声も上がる。
 「今や現金を使わない客が大半だ。スマホ決済がないと商売はできない」。上海市で雑貨店を経営する孫大軍さん(54)は語った。店のレジ近くの壁にはスマホ決済用の2次元コードが貼られている。客がスマホの専用アプリでこのコードを読み込み、支払額を入力すれば決済完了だ。
 中国のスマホ決済は、電子商取引大手アリババグループ系の「アリペイ」と、IT大手の騰訊(テンセント)系の「ウィーチャット」が2強。都市部のほとんどのコンビニや飲食店などで利用可能だ。大量に出回る偽札をつかまされる心配がなく、会計の管理もしやすいことなどから、利用者はここ数年で急増した。
 中国のITコンサルタント会社「易観」によると、中国でスマホなどモバイル端末を利用した決済サービスの取引額は2016年に約35兆元(約590兆円)。17年は2倍以上の約75兆元に達すると予測する。
 当局が決済履歴などを入手して個人情報を監視しているとの懸念も強いが、上海市の女性会社員、段馨恰さん(20)は「便利さが勝る」と話す。
 日本でも、中国人観光客が多く訪れる大手百貨店や家電量販店、コンビニが相次いで導入。アリペイの運営会社は来年にも、日本人向けのサービスを本格展開する方向で検討している。
 また、利用料金の支払いにスマホ決済を使って中国で人気の自転車シェアサービス大手「Mob・lke(モバイク)」は8月23日、札幌市でサービスを開始。今後もスマホ決済に関連した中国企業の日本進出の動きが広がりそうだ。
 一方、中国では、急激に進むキャッシュレス化に多くの中高年が対応できずにいる。店舗にある正規の2次元コードの上に偽のコードを貼って客から金をだまし取るなどの手口で、スマホ決済を利用した詐欺事件も多発。孫さんも「店には導入したが、自分で買い物する際には使っていない。詐欺も怖い」と語る。
 中国の60歳以上の人口は約2億3千万人で全人口の約17%を占める。専門家は 「過度のキャッシュレス化で一部の人は逆に生活が不便になってしまう恐れがある」と指摘している。
  (上海共同=木梨孝亮)